名前/よしたか
ウホホと原始人は名づけていた
ドクンドクンと野兎は名づけていた
風はいつの間にか吹く
名前だらけの世界の
名のない時間に吹く
名のない風
連れてかれる名前はなんだろう
つかの間に残る名前はなんだろう
長く長く残る名前はなんだろう
キラキラの純白だった名前のないものたちと
もどかしくもセカセカした名前たちが
見事、密接に、結合したものが
現在に咲いている
人が呼ぶために
人が分かち合うために
人が迷わないために
まっさらな渾然大地でティラノザウルスが威張りちらしていた時代から
多すぎる言葉が人を惨めな中毒者にした現在まで
あえて名づけないままの
ずっと名づけられないままの
そんな宝石があるとかないとか
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