夜と片目/木立 悟
目を閉じてもひらいても
夜に重なり現われる
光りかがやく胸のかたち
蒼のなかのからくりたち
高らかな鉛の奥から指さし
水面の緑と並んで馳せる
星と同じ色の曇
星と同じ夜の蒼
片目の水に落ちてくる音
曇に跳ねかえる道の音
虹に響く明かりから
ひとりひとりに滴がこぼれ
ひとりひとりにひらく水紋
重なる行方を聴いている
小さな歩幅を聴いている
まぶたの内を遠去かる曇
外には甘いにおいの鳥が
空に光を撒きながら
歩む人の背についてゆく
曇はいくつも生まれてちぎれ
片目と同じ色になり
どこまでも壊れた灯の道を照らす
どこまでも歩み去る背を照らす
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