シャッター/片野晃司
つまりそういうことにしておこうかな)あっちこっちで閉じ忘れた括弧をあつめて閉じて廻ってみたりして)立派なカメラを持ってるくせに何もしないから)こちらからタイミングよく飛び込んでいかなくちゃならない)背景の紫陽花までもが泥を蹴立てて彩りよく飛び込んでいかなきゃならない)レンズをすり抜け、シャッターをすり抜け)肌色みずみずしく紫陽花と一緒に拘束されていなくちゃならない)その間わずか千分の一秒である)被写体としてのわたくし界が襲いかかっていくような)つまりそういうことにしておいて)こっちはいいのにそっちはそんなで)ノートの切れ端に懸想文なんていまどき誰も書きもしないから)文字のほうから意味深に集まっては
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