月光庭園 ?大正風な少女趣味のソネット?/佐々宝砂
 
[黒き衣に]

星は輝けども
我を導かず
月は地を照らせども
我を照らさず

我が手を取りて
道示したるそのひとは
黒き衣(きぬ)召し
闇に立ちたり

さればこそ
黒き衣に身を包み
我は闇へと
踏み出せしが

黒き衣は物言はず
闇に紛れて消えゆけり




[月光の姫]

輝かしき陽射しに
君が光は失せにしを
いま再び光り輝きたる
月光の姫よ

青褪めしその面(おもて)に
さやかなる月光
君が喉に重く垂るる
古への玉(ぎょく)

そを見しはただ月光のみ
崩れたる城壁に
いかに君狂ひ踊れども

時来たりて
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