看取り(6)/吉岡ペペロ
て、おいしいんだよ、
すき焼き知ってるのか、
きのうの夜ごはん、肉じゃがだったでしょ、
息子は同僚の立石さんに肉じゃがをもっと美味しくしたのがすき焼きだと教わったのだそうだ。
風が強い。風が春のひかりから熱を奪っていた。
埃が舞う。アスファルトに付着した埃たち。
花粉症の同僚が花粉症はアスファルトのせいだと言っていた。
きれいな道になったお陰で、花粉がどこにも行けずに舞っているの、
どういうことですか、
杉の山の麓でも道が土のあたりでは花粉症にはならないらしいわ、
同僚がマスクをでこぼこさせながら教えてくれた。
お、とととと、
息子が風に身を任せてふざけていた。
カメラの音がした。
振り返るとこのまえの女の子がこんにちわというような顔をしてまた挨拶がわりに数枚撮った。
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