ゴールドスタイン/よしたか
 


春は皆のラブホテルだから
友の言葉尻をひっぱたこう
いい匂いがする人を敬おう
知らない家の玄関のように
僕を知らないハートマークにしないでほしい
行白のむこうで胸に響く言葉が待ち伏せして
感謝を表現したくない氷柱の難しさが
洗い立てのシーツに倒れこむ

シュガーもミルクも黄金色に溶けこんで
苛立ちはきれいに花瓶に収まった
春は生命が燃えあがると囁かれ
鏡についた鼻の油が変身を嫌っている
氷がカランと鳴ったコップから
編みこまれた情緒が正気を吸い上げたぞ

唇の空想でむせかえった他愛ない一時
春は無言の愛撫を庭に届けた
押し返す奇想天外な赤子たち
花冠をかぶって思案したがやはりまだ冬だ

言葉尻はパンみたいに焼き上がり
恨めしそうな憧れの香りがする
体中を鼻の穴にして
めいっぱい嗅いでやろう
太陽の作文を大地が読みこみ
花々は不思議な微熱で浮かれている

わけもわからずうんざりして昏睡した
夢見心地の陽射しが忍び寄り
草冠の僕は冬をゆっくりなくしていく


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