看取り(5)/吉岡ペペロ
る。
きょうは、死なないで、
またとり憑かれたようになんどもこころで呟く。
ぼくは顔を振り口を閉じたまま溜息を吐く。
そしてまた真剣な遊びを繰り返す。
白くて細い川。細いのは空から見つめているから。なだらかな石ころと草の山。夜。夜はどこだ。どこだっけ。ここだ。ここが夜。
カーテンはオーロラ、星は計器の明かり、そうこころで呟きながら口をすぼめて杉下さんのほうに風を吹かせた。
カーテンに仕切られた病室にはほかにも入居者がいる。
それなのに世界にはぼくのこころと杉下さんに訪れる死しかないようだった。
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