わび・さび・むなし/シンバ
 
頁をめくる旅に疲れた私は
前世へ遡ることにした

海の彼方から 押し寄せる敵衆は
一昔前までは 友だった
その一昔前までは 来客お断りの 一見さんで
そのまた一昔前までは 問屋でよく見かける 商売人だった

当時の年寄り連中を 各々集めてみたところ
今時の若い者は
と、みな口を揃えたそうな。
若者は頭を垂らしつつ
爺様に酌しつつ
揚々と帰路につく 後ろ姿を見送って
これだから年寄り共は
と、小さな溜息をついたそうな。

私は本を閉じ
後書きを綴ることに追われる
野心と意欲に満ちた 著者の定めについて 考えると
涙が禁じえなかった

愚か者か賢人か
結局は最後の 何者よりも若い者が
こう結ぶに決まっている
「血塗られた、当時として最良の選択だった」と。




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