途中下車/赤青黄
 
人が次々に入れ替わる普通電車
無人駅に降り立つ一つの影
踏み切りの音がゆらめく海辺の線路

対向車線がないから
線路を取り囲む風景は
この電車だけのもの

窓の縁で腕を組んで
眩しい夕焼けに目を細めて
静かに海を眺めている一人の少女の反対側の席で
僕は黙々と本を読んでいたけど
彼女を見ていたら
本と閉じたくなった

目的の駅は違うけれど
時間もあるし
少しだけ
海も見たいし


あの日
無人駅に降り立つ人の影は僕で
無人駅の先にある海はあの子のもので
こんな途中下車も悪くないなと
ちょっとだけ思った




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