サマーホリデー1994/平瀬たかのり
休みの日には
行く場所がない
独身者寮二階洗面室
の窓から
女はサンダル履き
ひとりこっちに
来るのが見えて
おばさんと呼ぶに若く
おねえちゃんと呼ぶには
年を経てそうな
女
ちょうどぼくの真下で
止まって
きょろきょろ辺りを見回して
もそもそもそもそもそ
道端にしゃがみこむ
じっと見る
ぼくは
息を詰めてじっと
なぜそんなところで
というのはきっと愚問で
ただそこでしたかった彼女の
色褪せた紺色スカート
その地面に
もちろん染みは
当たり前に生まれていくのだ
彼女の染み
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