二千十三年三月十一日に/夏美かをる
震災関連番組を見ている
私の背中に
六歳の娘が不意に覆い被さってくる
今朝思い切り叱られて
「ママなんか大嫌い」と
涙を溜めた目で私を睨みつけていた娘が
「ママ、大好き」と言いながら
私の首に腕を回してくる
その皮膚の温かさを確かめながら
並ぶ数字の重みを反芻する
死者 一万五千八百八十一名
行方不明者 二千六百六十八名
依然避難生活を続けている人
三十一万五千百九十六名
二千十一年三月十一日 午後二時四十六分
この瞬間に崩れ去った
普通の人々の普通の生活
一体彼らが何をしたというのだろう?
彼らと私を隔てるものなど
十時間の飛行時間以外何もな
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