最終回/平瀬たかのり
でいた夕刊紙を
バサリ、意味ありげに音たてて閉じるのだ
鍋のふたを開けるのは
娘であり、姉であり、妻であり、母であるところの
いつも元気いっぱい彼女の役目
ふわぁ、湯気がやさしく七人を包みこんだら
さあ、いただきます
おお、これぞ正しかるべき家族の姿
日曜六時半の幸福よ!
何ものにも替えがたき円卓の栄光よ!
パワーショベルの腕がぐぐっと
伸び上がり、一気に振り落とされると
風が巻きおこり
ポストからあふれ出た
変色した督促状が
たよりなく揺らめいて
巨大な歯が
陽光を乱反射させながら
とうとう屋根瓦に食いこんで
バキバキバキと壊しはじめる
バギバギバギとうち砕き続ける
グキャラゴオォッ
まだ壊されていない塀の上
白描が汚れきった毛を逆立て
獰猛な声で威嚇する
首輪の鈴がチリンと鳴る
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