忌/梓ゆい
 
死と向き合う時

見えるものは何かと

振り分けを考える。

『故郷へと向かう高速バスは、静寂のターミナルに停車をして寒い空気の中に降り立つ私の心は、都会の無機質に揉まれて麻痺をしてしまった。』

中央道を走るトレーラーを背後に

轟音のタイヤへと引きずり込まれぬ様に

見ないふりを続けていた。
足元に落ちる雪と

腐りかけた落ち葉を踏みつけて

死んだであろう誰かの命を貰い

静寂の中に潜むであろう魔物と睨みあっている。

『生命の力を確かめる私がいて、何かが壊れるほどに恐れが押し寄せて来る。』
暗闇の県道を足早に

死の瞬間は遠い先であるようにと

ただひたすらに願う。




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