前へすすまない水/
カンチェルスキス
ストーブの前で
きみの姿が消える
水がほしくなる
透明の重さのない
思い出にならない水
こわれたばかりの
ろうそくの炎が
いなくなったきみの吐息を
照らして揺れる
オリーブの実をかじって
閉じた後のくちびるのかたち
迷いが消える
微笑む空気の四隅をめぐって
水がほしくなる
思い出にならない水
前へすすまない水
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