セプテンバー山男/カンチェルスキス
 
 
 



 面接官は一重の目で
 おれを見つめ
 何も言わなかった
 机にある採用チェックシートの上の宙を
 ボールペンがせわしなく回転する
 肌寒い頃だったが
 秋だかまだ冬明けて間もない春先だったか
 忘れた
 吐く息は白かった
 そしておれの懐はさびしかった
 労働が素晴らしいことのように言うのを
 耳にする
 あんなものは何もせず暮らすすべを知らない知恵のないやつらが
 しょうがなくやってるだけのことだ
 尊いだとか人間的成長を促すだとかは
 嘘っぱちで
 働くことでやつらは自分が何の知恵もアホだと
 証明してるに過ぎない
 やらないで済む
[次のページ]
戻る   Point(6)