川柳が好きだから俳句を読んでいる(6、上甲平谷のこと)/黒川排除 (oldsoup)
 
人間の想像をはるかに飛び越えている、飛び蹴りで飛び越えている。それらに対しては暴力という言葉すら生ぬるいように思える。このように晩年は古風な枠組みの中にそれらが壊れはしないものの明らかに悲鳴を上げるような勢いで近代の文章を詰め込むといった作風が顔を出したりもするのだ。それでまた、芭蕉的な初心を忘れぬ作品も作っている。恐るべき守備範囲ではないか。若返った二度目の老人としての上甲平谷はまさしく超人として君臨している。

 巨人あり喝と?蝶吐いて去る

 なお付け加えるならばこの俳句集成は定価でも四千円、古書店でならもっと安く手に入る。なのに本の中には約九千三百の句が入っている。おれは他のどんな本を失っても上甲平谷の俳句集成と八木三日女の全句集だけは残しておきたいと思うほどに好きだが、リーズナブルで庶民に近いという意味合いから言えば上甲平谷の方がまさっているだろう。そういった意味でも超人的である。
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