硝子篇/
平井容子
もうありったけの陰を踏んでしまった
気がつけば空はゆるゆるになっていて
気が狂いそうにやさしい
どのまどろみも平等だった
角のはえた恋人がわたしを映して割れていく
心中みたいなラメが散らばり
からすがそれを食べにくる
これで良かったね、と言いながら
羽の影を追って
また新しい子らが
遊歩道へ落ちてくる、午後のさつばつ
あのとき踏んだあの子の骨は
甘かったかな
臭かったかな
会うことはもうないけれど
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