草球/梅昆布茶
僕はいつでも敗戦投手
君のこころのミットにボールを投げ続ける
変化球はいらない
走らない直球だけが僕の武器だが
九回裏観客席のざわめきが鎮まる
打席にはイチローではなく
どちらかというとたこ八郎に似たバッター
見かけによらない天才バッターなのだが
なんだか挑戦的な一瞥をなげてスタンドを指差している
観客席が海のようにざわめく
ふざけるなやり過ぎだぞ十年はやい
振りかぶって投げた球は澄んだ打音を残し
軽々とスタンドを超え
春の空へ消えていった
それは僕のはるの音だった
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