走れ私/コーリャ
 
、す、せ、製菓。そうだ。製菓コーナーだ。さ、し、す、せ、せ、聖歌コーナーで、チョコたちが歌をうたっている。虹色の光線のなかでチョコたちが。虹の歌。そうだ。チョコ。あ、チョコ、チョコ、チョコ、あ。あ、あ、あ、実在し、し、し、ていた。うれしい!うれしい!チョコたちが歌をうたっている。実在していた。私は実在しながら虹色の歌をチョコたちと共にうたいはじめた。

オリゴ糖入りチョコを購い。その場でパッケージを破る。一粒、口に含む。甘やかに溶けて、だいぶ頭がすっきりした。レジ待ちの客が訝しげにこちらをみている。あ、違います、違うんです。私は硬派なんです。と私は言う。レジの担当者が、いいからはやく帰ってください。と私に言い放つ。私は深く恥じ入った。

ちなみに、その後、メールは一通もこない。連絡先も見当たらない。女子は聖歌コーナーで虹色の歌をうたっているのだろうか?そして私の頭のなかでは、聖ヴァレンタインが静かに首を横にふりつづけている。
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