鏡/草野春心
 


  時計の針が午後にすすむ
  ぬかるみに片方の足をつっこむ
  目に見えぬ羽虫をよけるような、
  ぞんざいなしぐさでカーテンを閉めた
  


  部屋の卓上に置かれていた
  鏡はすっかり曇ってしまっている
  いまそれはあなたの手によって
  永遠に伏せられているから
  なにもはいりこむ余地はない



  あなたのこころのかすかな翳り……
  それにあわせて空気は揺れる
  ためされている
  そしてためらっている
  鏡は伏せられている、永遠に
  はいりこむ余地はどこにもない



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