看取り(4)/吉岡ペペロ
 
眠りから目覚めてしばらくのあいだぼくは不安なことのない世界にいられた。

息子と公園で遊んでいちど家で仮眠をとった。

夕方のひかりがベランダから射している。布団のおもてがすこしひんやりしている。

きょうは死なないで、ぼくはそう思ってもう不安のない世界が終わってしまったのに気づいた。

ピンク色に黄ばんだ夕方の道を息子と歩いてバス停に向かう。

夕方の道を看取りのために歩くようになってからぼくはその道中ずっと願わずにはおれなかった。

きょうは死なないで、誰も死なないで、

話しかけてくる息子に勘で受け答えしながらぼくはそのことばかり考えていた。

バスの座席は小
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