《冬の星座》にあのひとをさがす/石川敬大
 
してくる雑木林に
 どうやら
 雪がふりはじめたらしい


      *


 
 ほのぼのあかりてながるる銀河
 オリオンまいたちスバルはさざめく



 めぐりめぐる
 天球のどこかにあのひとはいる
 みえなくても感じられる こころの
 仰角の空のどこかに

 そのことにおもい至ったなら
 ひとはもっともっとやさしくなれるはずなのに
 世界のどこかで
 血がながれない日はない


 
 むきゅうをゆびさす北斗の針と
 きらめきゆれつつ星座はめぐる



 むきゅうという永遠を指さす北斗七星の
 空にも
 地上のどこにも
 どんな悪意もないはずなのに

 殉教した聖職者たちがそうだったように
 さゆるこころで
 空のどこかの 波に浚われた
 あのひとをさがす



     引用は、堀内敬三訳詩の《冬の星座》一番と二番



戻る   Point(16)