時の高速回転機/殿岡秀秋
時は切れ目のない波
凪いだ海の
ゆるやかなうねりのいただきの
光るところから
暗い窪みまで
隈なく見つめていた
幼い日
小学校でいやなことがあると
深くうねる波の底に下って
浮かびあがるまでが
長く感じられる
なかなか放課後にならないで
心臓だけが早鐘を鳴らす
時の流れを淀ませて
ぼくは淵を作り
大きな動力で回す
渦に吸い込まれると
すぐに大人になるための
時の高速回転が始まる
電気洗濯機のような水流に揉まれてから
ベランダに干されると
からだが大きく膨らむ
乾いたら
学校は卒業していて
酒を飲んで
恋人ができて
遊んでいればいい
ぼくは大きくなったからだで走りだす
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