檻/中川達矢
おりの外には、どんな世界がひろがっているだろうか。
ぼくの住む街は、毎夜毎夜、サイレンがなりひびく。どちらにしても、おりの中にいれられる人がいて、おりの中にいれる人がいる。
おなかがいたい。サイレンがなりひびいている今、おなかがいたい。サイレンはおなかのいたみをなおさない。ぼくは生むしかない。生める体を持ってもいないのに、生むことを要されるぼくは、いっそ、おりの中に入ろうか。
おりの中はまだいい。ショーウインドウやショーケース、水槽は罪だ。罪を包む箱が罪だなんて、残酷だ。ぼくは、募金をする。けれど、罪はお金の使い方を知らない。
おなかはまだいたい。生めるものは生んだけれど、
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