片輪の夢(散文詩)/水瀬游
夢の底は平らである。足元はアスファルトのように冷え切った灰色で、硝子のようにツルツルとしている。
夢の底は暗闇である。たった一本の街灯が放つ白く、おぼろげな光のみが頼りだ。
夢の底は広大である。街灯が照らすのはごくわずかな範囲のみで、あとは夜より暗い密室のような闇がどこまでも広がっている。
街灯の下には少女がいる。胸元まで真っ直ぐ伸び、藍のかかった黒髪は美しい。
少女ははだかである。黒髪とは対照的に白く薄い肌は、全身の血管を浮き出そうなほどにはっきりと赤く透かし、美しいというよりは、おぞましい、恐ろしいと言った表現がよく似合った。
少女には脚がない。脚が生えているはずの場所に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)