大きなお世話/千波 一也
 



大きなお世話を
売る店が
だいぶ減って
しまったから
世の中は
だいぶ自由になって
他人の
一挙手一投足を
監視したり
嘲笑したりして
ときを
費やしている





大きなお世話が
寝入ったあとには
きまって
風が
吹いていた
春を
あちらこちらに
振りまいて
暖かな
一陣に
つらなった

近ごろ
大きなお世話は
寝たきりが増えた





大きなお世話には
誘いに乗りやすいという
短所が
あったから
後味のよさは
そこに
理由があったのだろう

今では
すっかり
逆手にとられるけれど
[次のページ]
戻る   Point(8)