砂をんな/salco
すべり
さらさらと足下へ落ち
消えもせず溜って行きます
おんなはそれにも気づかず
寂しい
悲しい
つらい
と泣くばかり
出歩くこともありませんでしたから
一年後には
頭まで埋もれていました
百年が経ち
そこは小さな砂丘です
おんなはすっかり深く埋もれ
寂しい
悲しい
つらい
と泣くのです
汲めども尽きぬ砂泪が頂きを押し上げ
おんなをいっそう沈めて行きます
そんな砂丘を歩くと
靴底がこすれてぎうぎうと音を立て
砂粒がくるぶしまで行人を沈め
靴の中にも入り込み
かかとを掴んで歩みを遅らせ
後ろへ後ろへと引くようです
それはまるで
行かないで
ねえここにいて
ここに来て
と言っているようです
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