ありふれた十一通の手紙 ‐4‐/月乃助
 


少しく眠っていた
ワインのほこりをはらうように
表紙もはがれはじめた 
古ぼけた詩集を手にすれば,

あの時
あたしの詩集は、
日常という単語ばかりで 
充たされていた

「洗濯」
「掃除」
「買い物」
「育児」
「料理」
「家族」
「家計簿」
「夫の両親」
「土曜日ごとのSex」
「月曜日の憂鬱」

ほんのすこし 
西欧というパンをかじりに
海のむこうへ
心はずませいったのに
のばした腕に
月の石ほどに
比重をました
家族という
石ころがのせられた

あがないに
時に難しい言葉を
つづろうとも
文字をもたない古代の民さな
[次のページ]
戻る   Point(8)