隠喩について 詩と向き合う/葉leaf
東へ旅立つ人々よ
にくしみを夜明けの庭に植えて
立ちたまえ
妹の胸に植えて 去りたまえ
花嫁をうばわれた機関手のために
蘇鉄はけさうすあかい綿を噴き
ふるさとの日の出をぬぐう
(谷川雁「異邦の朝」より)
詩を読んでいると、様々な隠喩に出会います。隠喩とは直喩に対する概念です。直喩とは、「彼は狼のようである」のように、喩えるものと喩えられるものの類似性を、「ようである」「似ている」などの言葉を用いて明示する表現です。それに対して隠喩とは、比喩の関係を「ようである」「似ている」などの言葉で明示することをしません。その代わりに、隠喩は、端的に「彼は狼である」と断言し、そこで読
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