夫婦/小川 葉
あんなに抱いたり
キスしたりしていた妻が
今は物体のようにそこにある
その物体も
私のそれと同じように
いつかどちらかが先に
物体ではなくなるのだろう
あんなに抱いたり
キスしたから生まれたこの命が
命の摂理もわからないまま
この今が永遠であると信じている
子供よ
いつかそのことを問われた時
どのように答えればよいのかは
用意できてはいるのだけれど
夫婦はなぜこんなにも
物体となったまま
強い心のつながりを放棄せずに
ますます強くなっていくのか
その答えのように
子供という物体と
その心が
体のように
ここで結びついている
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