マネキン/まーつん
古いデパートの舞台裏、
職員用通路の片隅に、
忘れられかけた物置がある。
狭く、薄暗いその部屋には、
用済みになった小道具が。
埃をかぶったハンガー、
古い業務用掃除機、
仲間からはぐれたモップ、
錆びついて 開かなくなった脚立、
…etc。
そして
通路の電光を滲ませる、
小さな はめ殺しの窓の付いた、ドアが一つ。
いま、ふと
そのガラスに影がさし、
微かな蝶番の軋みと共に、
白い戸が ゆっくりと開き
一体のマネキンが、
よろよろと 入ってくる。
白い石膏
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