三杯の珈琲と靴擦れの老人/ぎへいじ
遮光カーテンの向こう側に目を細める
変形した足 破れた皮膚
珈琲一杯
二杯目で手帳を開いた
洗濯機の回る音はリズミカルでB5ノートの白銀を走るペンも軽い、
ペンの走る音は錯覚だ
テーブルの上を転がって行く
次の一杯を持ってレースのカーテンを分けてガラス扉を開いた
くたびれたサンダルが大丈夫だから何処か遊びに行こうよと
カップのぬくもりと陽ざしが溶け合い始めて
慌てて誘惑を振り切ってテーブルに戻る
たかが靴ズレで歩く気力が無くなるなんて
老いるとは こう言う事なのかと 苦笑いで飲みかけの珈琲をそのまま置いて 奥へ
部屋の奥へ
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