ゼリー/竜門勇気
 
た顔に見える目
本屋のくびれた空気に枯れそうになりながら
ふわふわ揺れて見える
ゆらゆらと揺れて消える

でも前から!
ゼリーみたいに揺れる夏の日から
ゼリーみたいに固まった冬の朝まで
わたしはさっきすれ違った人が
好きだったんです

空っぽのリュックは
時々わたしの作ったお弁当が
それ以外ではわたしのためのキャンディーが
入っていたこともあったのに

さっきすれ違った人は
そういうひとだったのに
優しい人だったのに
わたしはもうお弁当もキャンディーも
渡せないし貰えないから
空っぽを背負って
世界中の誰という誰もなく
すれ違う人になってしまったんです

わたしが必要としている人は
空っぽのリュックを背負って
雑踏を過ぎていく
誰もいない路地を過ぎていく
無数の世界から
一つの世界へ
すれ違っていき
ゼリーの中で呼吸している

世界はあなたの無意味も絶望も意味と理由に変えていく

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