星雲シロップ/aria28thmoon
 

「アイスコーヒーにシロップいれるとき、なんか綺麗だよね」
「……ごめん、わかんない。っていうか、その、」
「あ、マスミちゃん、シロップなんかつかわないか」
「うん」
「オトナだねぇ」
「そんなんじゃないよ、好みの問題」
「でも、ほんと、綺麗なんだよ」
「シオリちゃんが云うなら、綺麗なんだろうね」
「えへへ」

夏の暑い夜だった。
昼間のそんなおしゃべりをふと思い出して、
アイスコーヒーにシロップをいれてみる。

ゆらゆらと広がるそれは、
いつだったかテレビで観た、星雲のようだった。

空を見上げる。
たっぷりとした紺青。
その遥か彼方に、
ゆらゆらと広がるシロップのようなそれが
たゆたっているのだ。

グラスに口をつけると、
あまい という感覚がまた、
星雲のようにゆらゆらと、
口のなかを広がった。
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