灰色の水/
草野春心
きょうの朝は、
灰色の水にひたされている
人びとは鈍い眼をしてさがしている
ありもしない排水溝や
冬の葉のかけら、
あるいは大切なひとの
いっぽんの髪の毛か何かを
きょうの朝、水の底には
太陽がアメーバみたいな光を落とし
人びとはそこだけをよけて歩く
あなたによく似た女のそばを
誰かの古い長靴が
ぷかぷかと通り過ぎる
灰色の水にしずんでゆく
朝の底で
わたしのこころは
単純で
新円よりも完全な
ひとつの言葉をさがしている
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