微笑みを 預ける時/るか
音楽の意味を一粒ずつ穿つように地にかぐわしい穂を落とす稲が
暁の薄明かりのなかで
その明るさの意味に傾いた憫笑を預けながら
東洋の一都市の一角を仄かな優しさで染めている
まだ幼い光が飛沫のように地を跳ねる一瞬前のことだ
世界の意味が一斉に凪いでいる水平の極致
そんなとき
僕はまだ応えを口にすることはできないけれど
そのままで千年が風のように過ぎていくことを感じているから
地球という神話
愛という日食
洩れる呟き
(真鍮の柱のように人の陰が交差する明治通りの一隅に立ち尽くして
微笑む妖しいきみたちの
意味に脚を取られない軽やかなステップへ)
ぼくたちに歴史は関係なかったし
それはあらゆる罪を臓腑へ浸透させる日々の
疲労のなかで猶予された呼吸の韻律だった
郷愁の衣を脱衣した回想が遡及する記憶の果てに
未踏の未来が誰でもない鏡のように鼓動しているのを
聞け
ただ
しぬためだけに生まれたような素朴さで
宇宙の子どもたちへ
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