バラード/石瀬琳々
 


春になる 春になる と口にして
冷たい雪が目の中に降る
名づけられぬ憧れが今も鳥のように
光に打たれて翼を広げはじめる
静かな森が横たわる 空も雲も沈黙も
涙がすべてを濡らすだろう やがて雨のように
やがてなつかしい歌にも似てそれは


(風が吹いたなら バラード
 君の頬にそっと触れた歌を)


歌はやさしかった いつしかくちずさんだ歌は
風の中でひとり目を閉じて待っている
春になる、春になる、春になる、



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