窓際の猫/……とある蛙
閉め切った部屋の窓硝子の温度差
水滴によって曇っている硝子表面
外界の寒さと此処は無縁の筈だが
独り曇った硝子窓を見つめている自分は
一匹の黒猫だ
雌なのか雄なのか去勢されてから
噸(とん)と興味が無い
同居人が勝手に呼ぶ名前があるが
どうでもよい
同居人は何時だって人間なのだが
どうも野良だった時分の
記憶が忘れ去られ
此処の部屋に連れて来られてから
ずっと時間が無い
夏も冬もなく
まして秋も春もない。
ただ窓硝子から見える花が
黄色から赤に変わり
花がない季節がきて
たまに白い物が降る
停止した季節が流れる
同居人は気が向くと
抱きしめる
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