きしゃ/ねなぎ
目が覚めて
唐突に
帰りたいと
思った
何時ものような
寝ぼけたような
気怠い午後の
客先での現調の帰り道に
持ち帰りとした
案件の書類を
精査している
鞄の中で
何かが
音を立てた
気がして
列車を
降りられなくなって
気がつけば
揺れるような
氷の張った
田んぼの中の
畦を歩いている
どこへ帰ると
言うのだろうか
帰る場所など
無いのに
刺すような西日と
暖房に溶かされて
夢のように
この先に
納品書を
届けなければ
電線の無い線路が
冷たく続くので
この道には
枯れ草しか見えない
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