レールと荒野/藁谷 正太
 
ていたら
打ちっぱなしの壁と
倉庫が見えた

ぴかぴかと
光る
ちかちかと
点滅する
都会の夜も標本で
大切なものばかりが
量産されている
ひょいと靴を脱いで
あの娘の家に気軽に上がった子供のころのように……
靴を脱いで
雑居ビルの階段を一つ上がれば唐突に
長いレールのしかれた荒野にいるような気がする

そのうち汽車がやってきて

汽車は進む
汽車は崩れる
大きな事故は起こらない
汽車は進む
汽車は崩れる

「どこからきたの そんな汚れた靴で」
問いかける俺の口調は
いつもと同じで
大きな事故は起こらない
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