優しい雨/
川上凌
汚染されたこの透明な水は
知らないうちにわたしを汚染して
それでもわたしの一部になる
そしてやがて海へ還(かえ)り
いつかまた雨になるのだろう
細胞が死んでわたしは一度死に
透明な水によって細胞が産まれ
私はまた産まれる
めいっぱい手を伸ばして コップに注ぐ雨
溢れた透明な水は皮膚を濡らした
口ずさむは ジーン・ケリーの“雨に唄えば”
やがてわたしも恋をして雨に唄い
小さく脆く海へ還り
そして雨を唄う人の一部になるだろう
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