優しい雨/川上凌
 

雨で濡れた制服を物干しにかけると
お気に入りのセーターと
向かい合ってゆらゆらとダンスを踊った

優しい雨のなか
口ずさんだのはジーン・ケリーの“雨に唄えば”

これは何処からきた雨かしら
これはだれの雨かしら

雨をコップ一杯に溜めて飲み下してゆくと
透明な水なのに緑の日本海を吸い上げて
なぜここに透明で或(あ)るんだろうと
不思議に思った

“雨は汚いのよ”
小さな頃から言われてきた汚いという先入観
初めて破った禁忌(タブー)に 身体が震えた

飲み下した雨はわたしの身体になり
だれの雨でもなく わたしの雨になる

みえない汚れで汚染
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