涙の落ちるところ/木屋 亞万
 

命という命すべてを生み出してきた海こそ「産み」じゃないのと言う
海は産みで海亀は産みガメで
海はひたすらにあらゆるものを産み続けてきたのだと



わたしたちも海から生まれてきた
涙があふれ出てくるところは
わたしたちの故郷の海だ
どれだけ遠く離れても
故郷の海から滾々と塩水が身体に流れ込んで
目からぼろぼろ零れ落ちるのだ
頭に海ができた男が昔話に出てきたが
心の奥深くに誰もが
未だに海を秘めている



君がこぼした一粒の涙が
落ちるところにある草が
うらやましくてたまらない

君の涙をその身に浴びて
丸い雫を滑らせて
ピンとした曲線を描く

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