涙の落ちるところ/木屋 亞万
 
湿った砂の温度
掘るほどに水が滲んで
肌で感じて頬に触れる
潮風の温い感触
乾ききれない海草の匂い
思っていたよりも
生々しい身の回りのすべて
ひりひりと目に沁みるあれこれが
頭を取り囲んで白い泡で思考を埋める
我慢できずに恥部から漏れ出る
白い悲しみの塊がぼとりぼとり
穴の中へとうずたかく積み重なる
ごめんねと思いながら
悲しみを砂に弔って
海に逃げて涙を隠してしまう



ウミガメは卵を産むために生まれてきた産みガメだと
君がしたり顔で言ったものだから
ウミガメのウミは海に住んでるからだろうと尋ねたら
何を言っているのと言わんばかりに鼻で笑って

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