きりとり線/川上凌
さみしいアスファルトに薄い雪化粧
その上にきりとり線を描いてゆきます
おなじ歩幅で 一直線上に
きりとり線を描いてゆきます
振り返らない足あとは
戻らない昨日によく似ている
もうすぐさよならする教室から見えた
誰かが残したきりとり線
きりとって 貼って
出会って わかれて
そんなふうにして 誰かのきりとり線と
また混じり合って 別れてゆく
いびつに歪みながら
時折立ち止まりながら
それでもきりとり線を描いてゆく
優しく弧を描いて まっすぐ力強く
わたしは歩いてゆくのです
みんなもそれぞれのきりとり線を
描き歩いてゆくのです
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