あの子のこと/近藤正人
じきに星が美しく吼え
月が淫らに降り注ぐ季節が超えていきます
世界が昼に譲られるまでには
後いくばくも残っていません
長く人肌恋しい季節はかりそめです
伝わる温かさは
たとえそれが月の光のせいだとしても
今でも右手に温かいものです
赤みの薄れた線を追います
瞳はきっちりとは閉じていません
きらきらと光るまぶたに口を付けたいと願い
本当の傷を求めていたずらに言葉が笑い
的を得ない一日がまた過ぎ
なにを求めているのかさえ分からなく
降り出した小雨を瞼に心地よく
互いの傷を埋めるに足りず
とこしえの傷が全て酔いに浮かび
絶えぬ生業は明日も其処にあるでしょう
全て大丈夫です
君の傷跡は君を美しくしていますから
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