あの子のこと/近藤正人
顔に傷があるのと泣きそうに笑い
酔うとそこに赤い線が浮かび
細くて白い指がなぞって
その指に指を重ねたいと思い
ゆるりとして脈々と血が流れ
河口に近い河を思い
含まれるそれぞれの要素を想うでしょう
刈られた稲が等間隔に並んで下向きに干され
落穂を雀が拾った頃の話だと笑いましょう
高い太陽は黄金に色を添え
低い太陽は雲を赤く染めた
そんな頃の話だと笑います
今もその手は赤く染まっていると
声を大きくしてみても
届かぬ声が明瞭でないとすれば
音が景色に呑まれた良い例だと笑い
当たり前を大きな声で叫ぶ者を越え
意味を求め
届く声で語る者を追いましょう
じ
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