融ける/川上凌
猫の眼が好きだった
真横から見るとガラスみたいに夕焼けを映す
透明な眼が好きだった
ある野良と仲が良かったことがある
近所の鉄工所のおじさんに小屋を作ってもらったらしく
この街の寒い気候にはぴったりだった
その野良は人懐っこくて
生きる術を知っているようだった
毎週末、野良に会いに行った
かつお節をあげるのが常だった
帰る頃になると 自転車の車輪のあいだに
するりと三毛の体を滑り込ませて
帰らせまいとするところまで
ほんとうに猫らしくない猫だった
ある日
野良が保健所につれていかれたと友達から聞かされた
なんでもなかったかのように
あ、そ
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