ジョージ/……とある蛙
 
バス停で他の街に逃げだそうと
元気のないジョウジは
襤褸雑巾のように
しわくちゃに俯いて
声を掛けても応えはしない。

大声で奴の名を呼ぶと
親指を立てて
「東京で一稼ぎしてくるぜ」
等となれない言葉を返してよこす


奴の行き先きゃぁ 北千住
東武線で一本で駅まで着けば
歩いたって田舎に逃げ帰えれる
そんな逃げ道をはなから承知

一〇年前もそうだった
ここに骨を埋めるのだと
誓ったときがその五年前
大学からのUターン
地元の高校の国語教員
なったまでは良かったが
結局生徒を胎ませて
あげくに東京へ
そう北千住へ逃げていった

時代遅れのGジャンに
肩に担いだギターが哀れ
奴はもう四十過ぎ
夢を見るには遅すぎる

今度は何に逃げてゆく
女房か親か借金か
それともやくざに追われたか
終いに誰も見向きもされずに
そのまま忘れられ消えてゆく

奴が死んでも泣く奴ぁいない
裏の犬が喚くだけ
奴が死んでも泣く奴ぁいない
無縁仏の風来坊

古いよねぇ
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