明くる日の丘/山中 烏流
 


たくさんの忘れられなかったものたちが
付きまとい続けるから
わたしたちは
どこまでも、丘を下っていった





 歌を歌うように

 息をするように

 言葉をなぞるように

 手を触れるように


安物の、ありふれた言葉使いで
何よりも愛したかったものが
あなたでも、わたしでもなかったとしたら
どれだけ幸せだったのだろう

 思いをしたためるように

 パンを口に運ぶように

 空を見上げるように

 あなたの名前を呼ぶように






薄く窓を開けて
空を行く鯨の群れに手を振った

ちりばめられた光源すら寝静まった夜に
あなたは
そっと、目を閉じる












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